この記事では骨粗鬆症について解説していく。
閉経後骨粗鬆症と男性骨粗鬆症
骨粗鬆症は以下の2つに分類される。
- 閉経後骨粗鬆症
- 男性骨粗鬆症
閉経後骨粗鬆症
機序
閉経後骨粗鬆用の機序は以下の通り。
- 閉経後骨粗鬆症は「卵巣機能低下によりエストロゲン消退」によって起こる。
- エストロゲンはサイトカイン(破骨細胞機能亢進・骨芽細胞機能抑制)の働きを抑制している。
- 従ってエストロゲン消退によってサイトカインが亢進すると、骨吸収↑・骨形成↓となり、骨量が急激に減少する。
閉経後10年で身体順応が起こる
閉経後10年ほどが経過すると「エストロゲンが消退した状態」に身体が順応し、(男性と同様に)エストロゲン無しでもサイトカインを抑制できるようになると言われている。
その結果、閉経後10年以降は「加齢による骨密度現象カーブ」が男性と平行になる(以下のイラスト参照)。
治療
閉経後骨粗鬆症に対する治療として「エストロゲンによるホルモン療法」がある。
しかし、ホルモン療法により月経が再開してしまい、乳癌・子宮癌↑↑という副作用も生じてしまう。
そんな中、新薬として「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」が登場している。
この薬剤は「乳房や子宮ではエストロゲン様作用が発現せず(つまり月経が再開しない)、骨に対してのみ選択的に作用する」という特徴を持っている。
骨粗鬆症と診断されるには
「20代を基準に骨密度を比較した場合、閉経後は骨密度が半分以下になってしまうため「閉経後の全ての女性=骨粗鬆症」という診断になってしまう。
しかし、全員に診断を下す(治療をする)必要はない(医療費も莫大になる)。
では、何を基準に骨粗鬆症の診断を下すかというと以下の通り。
- 明らかに「同年代の平均」と比べて、骨密度が低下している。
- (骨密度が同年代の平均と同じであっても)骨折してしまい、骨密度低下を予防したい場合。
男性骨粗鬆症
男性骨粗鬆症は「加齢による骨代謝回転の低下」が原因で起こる。
骨は、常に新陳代謝を繰り返しています。古くもろくなった部分は壊されて(骨吸収)、その部分が新しく修復されています(骨形成)。
骨量、骨密度(骨の単位容積内のミネラルの量)は、思春期から20歳くらいまでに最大値に達し、40歳くらいまではその値が保たれ、その後減少することが知られています。
退行期骨粗鬆症のメカニズムは、次のように考えられています。
骨量は、閉経後の数年間に最も減少速度が高まります。
女性ホルモン(エストロゲン)には骨形成を促進し骨吸収を抑制する作用がありますが、閉経によって女性ホルモンが欠乏すると、骨の代謝回転が亢進し(高回転型)、骨吸収が骨形成を上回って急速に骨量が減少します。
これが閉経後骨粗鬆症です。このような閉経による変化は、60~65歳以降には一般的には落ち着き、次第に老化に伴って骨の代謝回転が低下していきます(低回転型)。
すると今度は、骨形成の低下が骨吸収の低下を上回り、ゆっくりと骨量が減少していきます。
これが老人性骨粗鬆症で、この老化による骨粗鬆症は、女性だけでなく男性にも起こります。~『よく診る整形外科疾患(骨粗鬆症)』より引用~
また、加齢によりCaの「腸管からの吸収」が低下することも原因である(加齢により腎でのViDの活性化が低下する)。
これに加えて、以下も骨粗鬆症を促進させる。
- 食事量↓ (=Ca↓・蛋白質↓)
- 外出頻度↓(=運動不足による荷重量↓・紫外線不足)
骨粗鬆症の治療
閉経後骨粗鬆症・男性骨粗鬆症ともに、治療内容は共通しており以下の通り。
※閉経後骨粗鬆症は前述した治療法も併用される。
最重要なもの
日光浴+運動+食事指導
※食事はCa・ViDだけでなく蛋白質も重要!
内服
Ca製剤・活性型ViD製剤
骨吸収抑制剤(ビスホスフォネート)
注射
カルシトニン(エルシトニン)