進行性病変 | 病理学

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この記事では進行性病変について記載していく。

 

進行性病変とは『活性病変』とも呼ばれ、「傷害に対する生体に対する修復反応が中心になって生じる病変」である。

 

目次

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肥大

 

肥大は「細胞の一つ一つが大きくなること(細胞数は増えない)」である。

 

肥大には以下が挙げられる。

  • 作業性肥大⇒骨格筋・心筋
  • 代償性肥大⇒残存腎臓(残った腎臓が過剰に頑張る)
  • 特発性肥大(病的)⇒肥大性心筋症

 

骨格筋の作業性肥大:

骨格筋は適切な負荷を加えれば年齢に関係なく肥大する。従って、リハビリをすることで高齢者の筋力増強も可能である。

 

心筋における作業性と特発性の違い:

「心筋の作業性肥大」は肥大ことで機能を向上させようと頑張っている(例えば動脈硬化時に肥大して頑張る)。

「肥大性心筋症」は、肥大によりアップアップとなり機能が低下してしまう(病的)。

 

増殖

 

増殖は『過形成』とも呼ばれ、細胞数が増加することで起こる。

 

生理的増殖

妊娠時の乳腺など。

 

病的増殖

  • 子宮内膜症(子宮内膜が異所性に増殖)
  • バセドウ病
  • 前立腺肥大(肥大という用語が使われているが「増殖」に該当するので注意)

 

 

再生

 

生理的再生

  • 表皮と付属器(基底細胞や毛など。基底細胞は角化変性のイラストも参照)
  • 粘膜上皮
  • 血球(幹細胞)

 

病的再生

  • 完全再生 ⇒全く同一の組織で補う
  • 不完全再生⇒機能も回復しない(例:肝硬変・心筋梗塞)。ヒトでは、ほとんどこちら。線維芽細胞による。

 

分裂細胞:

皮膚基底細胞・粘膜上皮・骨髄造血細胞(幹細胞)←常に分裂を繰り返している

 

分裂終了細胞(永久細胞):

視神経・心筋・横紋筋←生まれた時には、すでに分裂能を失っている(生下時に成熟=分化は終了している)。

 

条件付き分裂細胞:

線維芽細胞・幹細胞(肝硬変時に)・血管内皮細胞←必要であれば分裂する。例えば癌では血管内皮細胞が必要と判断され分裂し、成長が起こってしまう。

 

化成

 

化成とは「分化・成熟した組織が異なった組織におっき変わる現象」を指し、癌の発生母地となる。

 

扁平上皮化成

円柱上皮⇒扁平上皮【例:気管支(特に肺門部)子宮頸部(特に子宮膣部)

移行上皮⇒扁平上皮【例:なし】

 

腸上皮化成

ヘリコバクターピロリが関与。刺激により粘膜が傷み胃癌となる。

慢性萎縮性胃炎の際、胃幽門部の上皮が腸上皮に置き換わる。

 

バレット上皮

逆流性食道炎などで「食道の扁平上皮⇒円柱上皮」が起こる。

 

 

移植と拒絶反応

 

同種移植

※同種=ヒト同士という意味

  • 同種同型⇒一卵双生児
  • 同種異型この移植がほとんど

 

同種異型移植の際に拒絶反応が起こるのはMHC(主要組織適合抗原)による(HLAもMHCに該当する)。

移植された臓器を構成する細胞上のMHCを、移植を受けたヒトのTリンパ球が攻撃する。

拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を使う(例えば腎・心・肝移植時など)。

※骨髄移植は造血幹細胞を移植する(免疫系も供給者、すわなち移植した骨髄のものとなる)ので全く異なる(後述)

 

自家移植

拒絶反応なし・準備できる

 

異種移植

原則不可能

 

 

輸血

 

輸血の役割は以下の通り。

  • 赤血球:O2の運搬
  • 血小板:止血
  • 凍結血漿:血液凝固因子の補充
  • アルブミン:浮腫の治療

 

赤血球はMHC(主要組織適合抗体)を持たない

従ってTリンパ球による拒絶は起きない。

=血液型が合えば輸血可能(=造血は不要)

輸血のために調べる血液型はABOとRhD

 

ABO血液型

 

血液型が

  • A型のヒトは抗B抗体を持つ
  • B型のヒトは抗A抗体を持つ
  • O型のヒトは抵A・B抗体を持つ
  • AB型のヒトは持たない

ちなみに、ヒトが生まれつき持っている抗体はIgMである。

 

血液型 持っている血液型抗原 もっている抗体
A A抗原

抗B抗体

B B抗原 抗A抗体
O なし 抗A抗体と抗B抗体の両方
AB A抗原とB抗原の両方 なし

 

上記から、例えば以下が言える。

 

  • O型は「(O型以外の)誰からも供血してもらえない」が「(AB以外の)誰へでも受血することも出来る」という特徴がある。

 

  • AB型は「誰からも供血してもらえる」が「誰にも受血出来ない」という特徴がある。

 

抗体と抗原で起こること

「抗体」というのは特定の抗原に対して攻撃する役割を果す。

通常は例えばウイルスなどの病原体が体内に入ってきたときに作られて、その病原体を攻撃することで病気になることを防ぎます。免疫といわれる。

しかし、上の表で示した血液型に対する「抗体」は、なぜか生まれつき持っている。
つまり、今まで一度も体に入ってきたことがないのにも関わらず、「抗体」が作られているのだ。

そのため、血液型を合わせないで、たとえばA型の人にB型の赤血球が入ると、持っている抗体がその赤血球を攻撃してしまうことになる。

そして体の中で大量の赤血球が壊されて大変なことになる。
これが輸血をするときに血液型を合わせなければならない理由と言える。

 

O型は異型適合血

実は、血液型が違っても抗体が攻撃しない組み合わせがある。

たとえば、A型の人にO型の輸血をしたらどうだろう。

A型の人は抗B抗体を持っているが、O型赤血球にはB抗原は無いため、抗B抗体による攻撃は受けない。ということは、輸血しても問題はないことになる。
このように、“型は違うけれど問題はない血液”のことを「異型適合血」と呼ぶ。
前述したように、輸血の時は型を合わせるのが大原則だが、たとえば大出血をして大量に血液が必要となり、一致した血液型では足りない、というような緊急事態の時はこの「異型適合血」で輸血を行う場合もある。

 

 

Rh血液型

 

Rhには、DをもつRhD(+)、もたないRhD(-)に分けられる。

なお、RhD(-)は200人に1人の割合で存在する。

ちなみに、前述したようにA型は(日本人では)10人中4人なので、ARhD(-)は4/10×1/200=「500人に1人の割合」という計算になる。

RhD(-)のヒトに、RhD(+)の輸血をすると、抗RhD抗体(IgG)が作られる。

 

Rh不適合妊娠

  1. 「RhD(-)の母」が「RhD(+)の子」を妊娠・分娩すると、母体が抗RhD抗体(IgG)をつくることがある。
  2. 「第1子目の分娩・出産で抗RhD抗体(IgG)を作った母体」が第2子もRhD(+)の場合、不適合となり溶血⇒黄疸が生じる。

これをRh不適合妊娠と呼ぶ。

 

 

GVHD(移植片対宿主病)

 

輸血や骨髄移植により起きる。

 

輸血の場合

末梢輸血で歯、輸血血液(供給者血液)中の白血球は受血者の免疫系で排除される。

※なので、白血球を除くメリット(赤血球・血小板・凍結血漿・アルブミンなど)のみ享受できる。

 

排除されず、供給者のリンパ球が優勢となると、受血者を攻撃してしまう。

これを予防するために(輸血血液中のリンパ球を増殖不能にするために)、γ線・X線を15Gy(リンパ球の増殖を抑制するための最低線量)照射する。

 

骨髄移植

造血幹細胞のすべてを移植する。

これにより、血液型・免疫系が供給者のものとなる(必ず供給者のリンパ球が増殖する)。

移植を受けた患者のMHCが供給者のMHCと異なると供給者のリンパ球が患者細胞を攻撃する。

従って、厳密に可能な限りMHCの一致が必要(だから骨髄バンクがある)。

 

 

創傷治癒

 

一次治癒・二次治癒・三次治癒については以下の通り。

 

 

 

1期:

炎症期

2期:

増殖期

肉芽形成期

3期:

組織再構築期

経過 0~3日 3日~2週 2週~2か月以上
細胞

好中球

その後、単球も出てくる

単球がマクロファージへ。

線維芽細胞

線維芽細胞・上皮細胞
血管 拡張 血管新生 血管退縮
その他 血液凝固 コラーゲン合成 コラーゲンのリモデリング(再構築)
滲出(炎症反応の一つ) ビタミンC必要

創部の収縮(瘢痕形成)

 

創傷治癒が遅れる原因には以下が挙げられる。

汗腺・ステロイド投与中・糖尿病・加齢・ビタミンC不足・亜鉛不足

 

肉芽組織

 

肉芽組織血管内皮細胞(=毛細血管と同義)から成り、線維芽細胞(コラーゲン・フィブロネクロチン・ヒアルロン酸を産生)やマクロファージも含まれる。

 

上記が創傷治癒の本体であり、1年後には瘢痕となる。

ちなみに、皮腺・汗腺・毛嚢は再生しない

 

  良い肉芽 悪い肉芽
鮮紅色 灰白色・混濁
創液 少ない 多い(炎症が強いため and 持続するため)
弾力性 あり なし
細胞成分

血管内皮細胞

線維芽細胞

マクロファージ

が中心。

左記に加え、

好中球やリンパ球が多量に出現

「細胞数が多い」と表現する

 

 

骨折の治癒

 

骨折の治癒には以下の細胞が関与する。

  • 骨芽細胞
  • 破骨細胞(無秩序な骨形成を整える役割がある)
  • 血管内皮細胞

 

骨の役割は以下の通り。

リン酸カルシウム・カルシウムの貯蔵。造血

 

パラソルモンの作用で貯蔵しているCaを血中に出す。Caは心・骨格筋を動かしたりなどに必要。

※リンはATP合成(酸化的リン酸化)や核合成に必要。

骨について詳しくは⇒『骨の特徴 | 整形外科』も参照。

 

 

 

異物の処理

 

排除

異物が小さい場合はマクロファージによる貪食により排除される。

 

ちなみに以下の用語も覚えておくこと。

 

塵埃細胞(じんあいさいぼう):

塵埃細胞は「塵埃や炭粉を貪食した肺胞マクロファージや組織球」をさす。

塵埃が付着した細胞をそのままにしておくことは出来ないので、無害化させる。

 

心臓細胞

心臓細胞は「細胞質内に多量のヘモジデリンを含有している肺胞マクロファージ」である。

心臓細胞は肺の中にある(心臓の中にあるわけではない!)。

左心不全⇒肺うっ血⇒マクロファージで取り切れない赤血球を無害化させる。

 

 

器質化

器質化とは「排除されにくい異物が、周囲からつくられた肉芽組織により置き換えられること」を指す。

肺胞内の滲出物⇒肉変(に器質化)

線維素性侵害膜炎⇒絨毛心(に器質化)

 

分画

分画とは「壊死組織と正常組織の間を肉芽組織で作られた分画線で区画すること」を指す。

 

被包

被包とは「縫合糸・寄生虫糸(孵化しない卵)など不溶解性で吸収困難なものを肉芽組織で包み込むこと」を指す(手術の後に取り忘れたオペ器具などもか?)。

 

※周囲にはマクロファージが増え融合して異物巨細胞が出現することもある。

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