外傷総論 | 整形外科

未分類

この記事では外傷総論について記載していく。

 

骨折の定義

骨折の定義は「骨の生理的連続性が絶たれた状態」である。

上記の定義により「骨にひびが入った状態」も骨折に含めることが出来る。

骨折による疼痛は、発症後24~72時間ころに最も激しくなる(つまりタイムラグがある)。

 

閉鎖骨折と開放骨折

閉鎖骨折とは「骨が外界と交通していない骨折」で単純骨折と同義。

開放骨折とは「皮膚創傷と骨折部が交通しているもの」で複雑骨折と同義。

開放骨折は感染への対応が複雑という意味で「複雑骨折」とも呼ばれる。「(骨折線の種類で)粉砕骨折」という用語があるが、これと複雑骨折を混合してしまいやすいので注意

 

マルゲーニュの圧痛とは

骨折部には疼痛のほかに限局性の圧痛が認められ、これをMalgaigneの圧痛(マルゲーニュの圧痛)と呼ぶ。

 

骨折の治癒

骨折の治癒は「整復+固定+リハビリテーション」で成り立つ。

 

固定には以下がある。

  • 外固定:副子(=シーネ)・ギプス
  • 内固定:手術

 

骨折の治癒機転

  1. 受傷後2~3週間で肉芽組織が形成させる(肉芽組織はX線に写らないので、骨は離れているように見えるが、肉芽、は形成されている)。
  2. 肉芽組織に骨芽細胞が侵入し、受傷後3~4週で仮骨が見え始める(仮骨はX線に写るので、この時期のX線写真で初めて患者は安心する)。この時期より骨形成が開始される。
  3. 治療まで6~8週(半年~1年でリモデリングされる)

※上記はあくまで一般論で、部位などにより癒合期間は異なる。

 

治癒を左右する因子

  • 力学的安定性
  • 年齢
  • 感染
  • 骨折局所の状況
  • 血行状態

 

以下は治癒が難しい部位とされている。

大腿骨頸部・脛骨中下1/3・手の舟状骨・距骨体部・上腕骨解剖頚

 

遷延癒合と偽関節の違い

  • 遷延癒合:骨折治療に時間がかかっているが治療機転は働いている。
  • 偽関節 :骨癒合せずに骨折治癒機転が停止・終了したもの

 

上記のいずれであるかは、X線の鑑別は半年以上不可。

一方で、骨シンチグラフィーをすることで「単なる遷延(せんえん)癒合なのか、偽関節なのかを早期に鑑別できる。

 

 

目次

閉じる

捻挫(靭帯損傷)

 

靭帯損傷

靭帯損傷のポイントは以下の通り。

  • 可動関節の可動域を超える過度な運動を強制されて発生する。
  • 関節包・靭帯・腱などの損傷で骨折や脱臼は除く。
  • 症状は軽傷(微細損傷)から重症(完全断裂)まで幅広い。

 

症状

症状は以下の通り。

  • 自発痛・圧痛・運動痛⇒受傷時の方向へ動かすと痛い
  • 腫脹
  • 皮下出血(重症度に比例する)

 

診断

X線(骨折は無し)

 

治療

  • 基本は局所の安静
  • ギプス固定・福祉固定(シーネ)
  • 弾性包帯・サポーター・テーピング

 

ギプス固定のザックリとした目安。

状態 完治までの期間 ギプス固定期間
2~3週 1週
2~3か月 1か月
6カ月~1年 3か月

 

 

その他の外傷

 

上腕二頭筋長頭腱付着部炎

若年者・中高年者でも「腕の使い過ぎ」、高齢者でも受傷機転なしに発症。

症状はピンポイントではなく「肩が痛い」と訴えるが、触診にて腱付着部へピンポイントに圧痛を認めることが多い。

整形外科的テストは以下がある。

  • ヤーガソンテスト(肘屈曲・前腕回外位にさせ、抵抗を加える)
  • スピードテスト (肘伸展・前腕回外位のまま上肢を挙上させる。この時に、抵抗を加える)

 

鎖骨骨折

鎖骨の中央1/3の骨折が多い

肩関節脱臼

前方脱臼が多い(全体の9割)

前方脱臼で生じやすい合併症は腋窩神経麻痺である。

 

上腕骨骨幹部骨折

橈骨神経麻痺が合併しやすい

 

上腕骨外側顆骨折

外反変形・遅発性尺骨麻痺が合併しやすい。

※一方で、顆上骨折は内反変形を合併しやすい。

 

 

槌指(ハンマー指:mallet finger)

 

槌指(マレットフィンガー)の特徴は以下の通り。

  • DIP関節の伸展不能
  • 手指伸筋腱断裂+末節骨背側基底部の剥離骨折

治療

  • 新鮮例⇒保存療法(DIP関節伸展位で固定)
  • 陳旧例⇒手術的

 

コレス骨折とスミス骨折

 

  • コレス骨折手掌をついての転倒で起こる:橈骨遠位端が背側へ偏位(フォーク様変形)
  • スミス骨折手背をついての転倒で起こる:橈骨遠位端が掌側へ偏位

 

月状骨骨折と股関節脱臼

 

月状骨骨折

月状骨骨折は発見しにくい。また、剪断力が働くので固定性が得にくく、偽関節を形成しやすい

 

股関節脱臼

股関節脱臼は後方脱臼が多く、この際に大腿骨頭壊死が合併することがある。

 

 

半月板損傷

 

  • 日本では、外側半月が円板状半月になっている人が多い。
  • 欧米では、内側半月が円板状半月になっている人が多い。

原因、

半月板がが大腿骨と脛骨に挟み込まれて断裂。

 

症状

  • 受傷直後:膝痛(内or外)⇒数時間で腫脹(+)・伸展不能⇒1W後腫脹・疼痛(-)
  • 小断裂⇒数週間で関節可動域も戻り、スポーツ復帰可能。
  • ただし、同様のことを繰り返し大断裂に繋がることも(大断裂では手術適用)。
  • あるいは(無痛であるが)Locking(屈曲は可能だが伸展していくと引っ掛かって完全伸展不能)となる。

※「関節鏡手術レベル」であるにも関わらず保存療法を選択した人にLockingが起こりやすい(すべての人が手術を選択するわけではない)。

 

徒手検査

  • Apey test   :伏臥位・牽引(靭帯負荷↑)と圧迫(半月板負荷↑)があり鑑別に使える。
  • McMarray test:背臥位・膝屈曲位からの伸展でロッキングを再現している。ただ下腿回旋も入ることで負荷↑(下腿内旋で外側半月、下腿外旋で内側半月を評価)。

 

診断

MRI

※半月板はX線では写らない

 

治療

  • 保存的  ⇒大腿四頭筋強化訓練
  • 鏡視下手術⇒外1/3は縫合、内2/3は摘出(部分or全摘)

 

 

膝靭帯損傷

 

症状

受傷直後⇒膝痛。数時間後に腫脹(出血)・疼痛・ROM制限

1週間後⇒腫脹改善、徒手検査出来るほどに動かせる。

部分断裂⇒受傷3~4週で無症状に

 

完全断裂⇒受傷3~4週で腫脹・疼痛は消失するが以下が残存。

  • 前十字靭帯損傷 :前方引き出し現象膝折れ(gicing way)
  • 後十字靭帯損傷 :後方引き出し現象
  • 内側側副靭帯損傷:外反動揺性
  • 外側側副靭帯損傷:内反動揺性

 

徒手検査+診断

 

側副靭帯損傷のテスト

内外反ストレステスト

膝伸展位でOK。

30°屈曲位のほうがLPPになるので、その方が楽だという人には30°屈曲位で(この辺は、臨機応変に)。

 

前十字靭帯損傷のテスト

  • 前方引き出しテスト(膝90°屈曲位で=下肢屈曲位で)
  • Lachman test(膝15°屈曲位で。前方引き出しの肢位で痛がる人では、この手法でもOKって感じで臨機応変に)

 

後十字靭帯損傷のテスト

後方引き出しテスト

 

治療

 

十字靭帯

部分断裂⇒保存療法

完全断裂⇒手術・腱再建術

側副靭帯損傷

新鮮例は保存的に⇒ギプス固定(完全伸展位・鼡径部~足関節まで固定)

陳旧例(受傷後3W以上経過)では保存的には無理なので腱再建術orそのまま(保存的に)。

 

 

アンハッピートリアード

以下の3つが揃うと「アンハッピートリアード(=予後が悪い)」と言われている。

  • 内側側副靭帯損傷
  • 内側半月板損傷
  • 前十字靭帯損傷

 

 

前脛骨区画症候群

 

区画症候群とはコンパーメントシンドロームとも呼ばれ、上下肢で起こりやすい。

 

区画症候群の機序

(急に)普段やらないような激しい運動をするなどによって組織内圧上昇、各筋内の出血による浮腫などが生じる。

一方で、筋膜は複数の筋を束ねて覆っているが、伸張性はほとんど無いため、筋膜内において組織内圧が上昇する。

すると血行障害や神経麻痺に繋がってしまう。

 

前脛骨区画の構成要素

区画症候群は、特に下腿に起こりやすく下腿4区画のうち特に前脛骨区画に生じやすい。

そんな「下腿の前脛骨区画」を形成する要素は以下の通り。

  • 足関節・足趾の伸筋(前脛骨筋長母指伸筋長趾伸筋)
  • 前脛骨動脈
  • 深腓骨神経

 

原因

  • 筋浮腫   :激しいスポーツ・長時間の歩行など
  • 筋膜内圧上昇:区画内出血

 

症状

  • 前区画部の激痛と腫脹
  • 足背動脈脈拍減弱または消失(前脛骨動脈は足背動脈につながっているので生じる)
  • 下垂足(深腓骨神経に足関節背屈筋が支配されているので生じる)

 

治療

緊急筋膜切開にて落ち着くまで開放創にしておく(切開により内圧が下がる)

 

 

アキレス腱断裂

 

アキレス腱断裂が起こると「歩けるが、つま先立ちが出来ない」という状態となる。

 

検査法

アキレス腱断裂部の陥没の触診

トンプソンテスト陽性(伏臥位・腓腹筋つまんでも足関節背屈しない)

 

 

むちうち損傷・頸椎捻挫

 

受傷機転

追突された際に、頸椎部が過度に伸展されて生じる。

 

特徴

傷害は軟部組織にとどまり、脊椎の骨傷・椎間板損傷は除く。

 

症状

症状は「受傷直後」と「数日後」で異なる場合があり、以下が特徴。

  • 頚部痛+疼痛性可動域制限
  • 自律神経失調症状・バレリウ症候群(診断できない不定愁訴ということで)

自律神経失調症上・バレリウ症候群について:

むち打ち損傷・頸椎捻挫では以下などがみられる。

上肢しびれ ⇒MRI正常

めまい・難聴⇒耳鼻科正常

目がかすむ・視力が落ちた⇒眼科正常

頭痛・吐き気⇒脳外科正常

上記は、検査所見が異常ないことから「自律神経失調症」などと一括りに纏められることがある。

 

治療

  • 頸椎の安静⇒装具(頸椎カラー)
  • NSAIDS・湿布

 

※保険が絡んでくるため、精神的要因も関与することがあり、難治となるケースも。

※受傷3か月で後遺症診断となり、保険会社からは「まとまったお金」を渡され「あとは自分で治してください」と突き放された途端、急に症状が悪化するなど。

 

 

胸腰椎圧迫骨折

 

  • 脊柱圧迫骨折は胸腰椎移行部に多い(大まかにT11~L12くらいを胸腰移行部と表現することがある)。
  • 椎体圧潰されたまま治療することが多い(保存療法)
  • 椎体を元に戻す治療も確立されているが、高齢者が受傷した場合「手術までせずに保存療法で」となるのが一般的。

 

脊髄損傷

 

脊髄損傷の特徴は以下の通り。

 

病態

脊髄実質の出血・充血・浮腫を基盤とした脊髄の挫滅と圧迫病変。

 

分類

  • 完全麻痺⇒障害レベル以下の知覚消失・運動麻痺(反射は後述)
  • 不全麻痺⇒障害レベル以下の機能遺残。

 

脊髄損傷には受傷直後の症状が、そのまま残存するとは限らず特徴は以下の通り。

  • 受傷後24時間以内に麻痺の改善徴候あり
  • Sacral sparingがある

受傷直後は出血・充血・浮腫により脊髄が圧迫され、「実際の損傷レベルよりひどい症状が起こる場合」がある。しかし、それらは時間経過とともに(出血・充血・浮腫が引いてくるので)軽減し、明瞭な損傷レベルが判断できるようになる。

Sacral sparingとは「(脊髄は層状構造があり、脊髄中心の損傷では脊髄外側の仙髄伝導路が保たれっるため)中心性脊髄損傷では仙髄支配域での運動が可能であり、知覚も失われない(=予後が良い)」ということを指す。

Sacral sparingがあるかどうかを簡便に評価する指標としては「母趾の屈曲運動」「肛門反射・肛門の知覚」が挙げられる。

従って、受傷直後は四肢が全く動かせなかったとしても、再三上記を確認しながら経過観察をすることですることで非回復性か回復性かをチェックすることが重要。

 

好発部位

  • 頸椎
  • 胸腰移行部

 

 

症状

 

全身症状

全身症状は頚髄損傷で起こり、具体的には以下の通り。

  • 体温調整中枢障害(過高熱で42°以上)
  • C3以上損傷⇒自発呼吸なし(横隔膜神経の完全麻痺による)
  • C4以下損傷⇒自発呼吸あり(ただし横隔膜神経不全麻痺により呼吸機能不全が生じているケールあり)
  • 麻痺部の発汗不能⇒自律神経障害

 

局所症状

受傷直後は出血や浮腫などのために、損傷部位より2~3分節上位までの麻痺症状が出現することが多い(前述した通り)。

 

脊髄性ショック

脊髄ショックは頚髄損傷で生じる(腰髄損傷では生じない)。

  1. 受傷直後は上下肢弛緩性麻痺・知覚消失・反射消失・病的反射なし。
  2. ただし24時間~3か月以内に回復(明確な原因は不明だが、出血・浮腫なのど改善が考えられている)

 

排尿障害

受傷直後は「尿閉(膀胱に尿は溜まるが尿意無し・排尿できない)⇒失禁」

脊髄ショックから離脱すると以下のいずれか。

  • 自動性膀胱S1以上での障害(尿意は無いが、膀胱に刺激が加わると全排尿可能。例えば「腹圧・腹部の圧迫での排尿」が可能。ただしオムツは必要)
  • 自律性膀胱S2・3での障害(尿意なし・自分の意思とは関係なく尿が垂れ流される=失禁)。

 

(急性)中心性脊髄損傷

頸椎を過伸展した際に、脊髄が脊柱管にぶつかって発症。

「受傷直後は四肢麻痺」であっても、よく回復し、上下肢機能がほぼ戻る

 

合併症

  • 尿路結石⇒腎不全
  • 褥瘡(知覚消失により「持続圧による循環障害」に気づかないなど)
  • 異所性骨化(不動により形成)

 

 

診断(高位)

 

  • C3:自発呼吸無し(完全四肢麻痺)
  • C4:自発呼吸あり・三角筋(肩関節外転)
  • C5:上腕二頭筋(肘屈曲←ただし弱い)
  • C6:腕橈骨筋 (肘屈曲←完全に可能)
  • C7:手関節屈筋群(手関節掌屈)、上腕三頭筋(肘伸展+肩内転)・手指伸展
  • C8:手指屈曲
  • Th1:上肢機能すべて正常

 

C6では肘屈曲を利用し(ベッド柵などに上肢を引っ掛けることで)寝返り可能だが、肘伸展できない。C7では肘伸展を含め差上肢機能に必要な多くの要素が獲得できるため、C6・C7どらまで遺残しているかは重要な境目。

 

 

末梢神経損傷

 

  1. Neurapraxia(一過性伝導障害)
  2. axonotmesis(軸索断裂)髄鞘は温存されいるので再生可能(1日1-2mmの速度で再生し、5-6カ月で戻る)
  3. neurotmesis(神経断裂)
ワーラー変性:②③で起こる変性。末梢神経線維が切断や挫滅などにより神経細胞との連絡が断たれたときに生じる変化のこと。 神経線維の断端遠位部より始まり、軸索は腫大した後に萎縮を経て断片化していく。

 

※神経の再生はTinal徴候で評価することが出来る。

 

 

正中神経・尺骨神経・橈骨神経麻痺

 

ここでは正中・尺骨・橈骨神経が障害された際の特徴的な麻痺について記載していく。

 

正中神経麻痺

 

高位麻痺

円回内筋症候群で生じる

祈祷指位(小指・環指しか曲げられない)

 

 

低位麻痺

手根管症候群で生じる。

猿手(母指対立運動不能・母指球萎縮)が特徴。

低位麻痺ではファレンテストが陽性となる。

Phalen's testとは:

手関節を他動的に最大掌屈させるテスト。約1分で、正中神経領域にしびれ、疼痛が出現する。

 

尺骨神経麻痺

 

高位麻痺

肘管症候群で生じる。

 

低位麻痺

Guyon管症候群で生じる。

 

以下の鷲手が特徴的。

 

フローマン徴候陽性となる。

Froment徴候とは:

母指内転筋がマヒするため、紙などを指で挟む際(母指内転ではなく)母指屈曲(母指屈筋群=正中神経支配)で代償しようとする。

 

橈骨神経麻痺

 

高位麻痺

下垂手(手関節を背屈できない)が特徴的。

※女性に腕枕をした際などに、上腕の橈骨神経が圧迫されて(一過性の)下垂手になったりする。

 

低位麻痺

回外筋症候群(=後骨間神経症候群)で生じる。

低位麻痺では手関節背屈運動は保たれる。

 

 

腕神経叢損傷

 

腕神経叢損傷の分類

腕神経叢はC5・6・7・8・Th1の頸椎神経根から形成される。

損傷の分類は以下の通り(オートバイで神経根が強く引かれて発症することが多い)。

  • 全位型⇒C5・6・7・8・Th1の損傷(上肢1本のマヒ)
  • 上位型⇒C5・6・(7)の損傷(肩外旋・肘屈曲・前腕回外の障害、手指運動可)
  • 下位型⇒C(7)・8・Th1の損傷(前腕回内・手関節掌屈・内在筋障害=手指運動不可)

・全位型:上肢が側方へ強く引かれ発症

・上位型:上肢が下方に強く引かれ発症

・下位型:上肢が上方に強く引かれ発症

※「腕神経叢損傷」と聞くと、文字通り「腕神経叢が損傷された」とイメージしてしまいがちだが、「腕神経叢を形成している神経根(の全てor一部分)が損傷された」という解釈が正しい。

 

引き抜き損傷の鑑別

引き抜き損傷とは「神経根が脊髄から引き抜かれた損傷」を指し、引き抜き損傷では手術が不可能である。

従って、「発症した腕神経叢損傷が引き抜き損傷か否か」を鑑別することは重要となり、以下の方法が用いられる。

 

脊髄造影

(引き抜き損傷では硬膜に穴が開いているので)造影剤が漏れる(=漏出像)

 

軸索反射試験

ヒスタミン皮内注射にて、後根神経節での反射(=軸索反射)により皮膚発赤・腫脹が出現するかを評価。出現するようであれば後根神経よりも中枢(=椎間孔の内側)で損傷している(=引き抜き損傷)と判断する(=手術は不可能)

 

治療

以下は保存療法を選択

一過性神経伝導(neurapraxia)=一過性なので改善する

軸索断裂(axonotmesis)=髄鞘が残遺しているので再生を期待

引き抜き損傷=手術できないので

 

以下は手術療法を選択

神経断裂(引き抜き損傷では不可能)

 

分娩麻痺

 

分娩麻痺の概要は以下の通り。

  • 分娩時、産道に肩が引っ掛かり、頭を強く引っ張ったことで発症する腕神経叢損傷。
  • 90%が上位(下位へ広がるほど重症)
  • 運動麻痺が強いが、知覚障害は軽いことが多い
  • 予後は非常に良い:腕神経叢を緩める肢位(肩外転90°)にて数週間で回復
関連記事