この記事では、関節リウマチと結核性脊椎炎(脊椎カリエス)について記載していく。
関節リウマチ(RA)
関節リウマチの特徴は以下の通り。
- 多発関節炎を主症状とする慢性疾患で、同時に関節以外で臓器も障害される全身性の炎症疾患(自分で自分を攻撃する「自己免疫疾患」の一つ)。
- 原因不明
- 20~50才の女性に多い
臨床象
初期症状
- 朝の強張りで始まる⇒徐々に疼痛出現
- 同時に易疲労性・全身倦怠感・食欲低下・体重減少など
関節症状
- 小さい関節(PIP関節・MP関節など)に左右対称に起こる(ただしDIP関節は初期に侵されないのでへバーデン結節との鑑別が初期には可能)。⇒次いで手・肘・膝・股関節など大きな関節へ広がっていく。
- 手指・足趾の変形(例えばスワンネック・ボタンホール変形、尺側偏位)
- 脊椎の環軸関節亜脱臼(リウマチの頸椎関節は禁忌程度に思っておくこと!)
関節外症状
- 全身症状:易疲労感・全身倦怠感・体重減少
- 貧血 :正球性正色素性貧血
- 皮膚病変:リウマトイド結節(皮下の炎症性肉芽組織)
- 肺 :胸膜炎・間質性肺炎
- 心 :心膜炎・心筋炎
- 眼 :強膜炎・乾燥性角結膜炎
- 神経 :手根管症候群・多発神経炎
- その他 :筋萎縮・腱鞘炎・アミロイドーシス・骨粗鬆症
関節破壊のメカニズム
- 「何らかの起炎因子」に反応し、滑膜が充血・浮腫・フィブリン滲出。
- 滑膜のキズを治すため「線維芽細胞による線維組織(=肉芽))」が形成される(この病的な肉芽組織はパンヌスと呼ばれる)。この肉芽組織には(破壊産物や滲出物の処理機構として出現した)組織球やマクロファージが多量に含まれている。
- 滑膜が(肉芽が出来たことでボテッと)肥厚する(=滑膜肥厚)
- 滑膜が軟骨に接触・肉芽中マクロファージが軟骨破壊。
- この肉芽組織の中には多数の破骨細胞が含まれていることも分かっている(=骨破壊も生じる)
- 更に肉芽が骨・軟骨の破壊産物も貪食・吸収を繰り返すことで高度な関節破壊が生じる。
診断
RF(リウマトイド因子-IgG抗体):
※昔はコレしか診断方法なかったが、特異度が低く参考になりにくかった。
抗CCP抗体:
「リウマチの滑膜にしか存在しないタンパク『CCP』を抗原とした自己抗体」を測定する方法。特異度が91.5%で早期診断が可能となった。
RF( リウマトイド因子 )は関節リウマチに感度が高い一方で特異度が低いという欠点がある。一方でACPA( 抗CCP抗体 )は、RFと同程度の感度がありながら、特異度が高い抗体。
関節症状(痛み、はれ)を有する場合は両者ともRAの早期診断には有用であるが、無症状の場合は RFのみ陽性の意義は乏しいとされる。一方で RF, ACPAともに陽性の場合は無症状であっても近い将来のRA発症を強く示唆する所見である。
治療
様々な薬物療法があり、具体的には以下などが挙げられる。
- 疾患修復性抗リウマチ薬(DMADs)
- 生物学的製剤
- 副腎皮質ステロイド薬
- NSAIDs
・・・・・・・など。
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)
結核性脊椎炎は、以前「脊椎カリエス」と呼ばれていた。
特徴は以下の通り。
- 脊椎に現れる結核で、骨関節結核の50%を占める。
- 胸腰椎に多い(腰椎50%・胸椎40%・頸椎10%)
- 椎体前部に感染(血行感染)
症状
- 症状は背部痛で、初発のころは軽い鈍痛
- 進行とともに疼痛増強+疼痛性運動制限
- 更には脊椎の不撓性(ふとうせい=痛くて動かしたくなくなること)
- 進行すると結核の膿瘍が脊髄神経を圧迫して麻痺が出現=Pott麻痺(ポットまひ)
治療
- 抗結核薬
- 固定用装具で安静
- もしPott麻痺が高度な時は手術適応