免疫異常 | 病理学

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この記事では免疫異常について記載している。

 

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アレルギー

 

アレルギーとは「免疫応答の結果が生体に不利益な症状を呈したもの」を指す。

「外部からの異物」について応答するかしないかは人により異なる。「抗原性」や「免疫応答の引き起こしやすさ」も様々で個人差がある。

アレルギーの原因物質は「アレルゲン」や「抗原」と呼ばれる。

抗原は免疫系に対して以下の反応を起こす。

  • 液性免疫(Bリンパ球)⇒抗体(免疫グロブリン)産生
  • 細胞性免疫     ⇒感作したTリンパ球を作る

 

Ⅰ型アレルギー

 

Ⅰ型アレルギーの特徴は以下の通り。

「アレルゲンに対応するIgE抗体が認識してアレルギーを起こす。

肥満細胞好塩基球からヒスタミンが分泌

 

疾患例としては以下などが挙げられる。

食物アレルギーアトピー花粉症蕁麻疹ペニシリンショック

 

Ⅱ型アレルギー(細胞傷害型)

 

Ⅱ型アレルギー(細胞傷害型)の特徴は以下の通り。

代表例として「不適合型輸血の際に生じるアレルギー」が挙げられる。
  • 例えばA型の赤血球をB型のヒトに輸血しようとした際に、抗A抗体が認識、そこに補体が結合して溶血が生じてしまう。
  • 例えばRh不適合では、抗Rh抗体が認識し、K細胞になって溶血が生じてしまう。

 

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合型)

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合型)の特徴は以下の通り。

  • 「抗原・抗体の複合物」が沈着して、その部位に傷害が起きる。
  • 補体が結合して分解開始。沈着した部位全体を傷害する。

 

疾患例としては以下などが挙げられる。

糸球体腎炎ループス腎炎血清病全身性エリテマトーデス・鳥飼い病

血清病:

動物(マウスなど)で作った抗毒素を投与した後に起こるアレルギー反応。

例えば、ウマの血清成分に対する抗体をつくる。

 

 

 

Ⅳ型アレルギー(遅延型)

 

Ⅳ型アレルギーの特徴は以下の通り。

(特異的な異物に反応した)感作Tリンパ球が関わる細胞性免疫が関与(液性免疫ではない!)

関連記事⇒『体制防御能について(病理学)

 

具体的な反応としては以下の通り。

  • ツベルクリン反応レプロミン反応
  • 接触性
  • 皮膚炎
いわゆる「金属アレルギー」と呼ばれるものは、接触皮膚炎に該当する(銀歯によるアレルギーなど)。アナフィラキシーと間違いやすいので注意。

 

Ⅴ型アレルギー(主にバセドウ病)

 

Ⅴ型アレルギーの代表はバセドウ病である。

 

バセドウ病におけるフィードバック機構は以下のイラスト参照。

 

症状

バセドウ病はグレーブス病とも呼ばれ症状は以下の通り。

  • 発汗過多
  • 心拍増加
  • るいそう(代謝亢進・疲労)

 

検査

  • T3・T4は高値
  • TSHは限りなく0に近くなる。
  • 抗TSHレセプター抗体は陽性

※加えて抗マイクロゾーム抗体・抗サイログロブリン抗体も陽性となる。

 

自己免疫疾患

 

自己免疫疾患は「自身の構成成分に対する抗体を持つ」が特徴。

本来なら自己抗体は持たない。

例えばA型のヒトは「抗A抗体を産生するBリンパ球」をアポトーシスで排除してから生まれる。

 

自己免疫疾患としては以下などが挙げられる。

  • 自己免疫性溶血性貧血(抗赤血球自己抗体):溶血(赤血球が壊れる)は抗体によって起こる。
  • 悪性貧血(抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体):慢性萎縮性胃炎でVB12(赤血球の成熟に必須)の吸収不良。
  • 重症筋無力症(抗アセチルコリンレセプター抗体):バセドウ病とは逆の作用をするレセプター(関連記事⇒「重症筋無力症:整形外科」)
  • 糖尿病(抗インスリン抗体・抗ランゲルハンス島抗体)
  • 特発性血小板減少性紫斑病(抗血小板抗体)←ヘリコバクターピロリ菌と関連すると言われている。
  • 橋本病(甲状腺機能低下症:抗マイクロゾーム抗体・抗サイログロブリン抗体)←T細胞も関わる(細胞性免疫も関わる)というのがバセドウ病との違い。
  • 自己免疫性肝炎(抗平滑筋抗体・抵核抗体)
  • 原発性胆汁性肝硬変(抗ミトコンドリア抗体)
  • グッドパスチャー症候群(抗基底膜抗体)→急性糸球体腎炎(血尿+)肺胞出血(血痰+)

 

膠原病

 

膠原病はコラーゲン病と呼ばれることもある。

 

膠原病は「炎症の場が結合組織(血管・骨・筋も結合組織で造られている)」であり、フィブリノイド変性が生じる(免疫複合体の沈着と、その周辺の炎症)。

 

全身性エリテマトーデス(SLE)

 

全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴は以下の通り。

  • 1:10で女性に多い
  • 多臓器傷害性全身性炎症性疾患
  • 関節・発疹・発熱・蝶形紅斑光線過敏症ループス腎炎
  • 抗核抗体(抗dsDNA抗体・抗Sm抗体)
  • 白血球減少→汎血球減少・補体低下

 

関節リウマチ(RA)

 

関節リウマチ(RA)の特徴は以下の通り。

  • 1:3で女性に多い
  • 非化膿性関節炎
  • TNFαによる炎症疾患(←これが持続的に出ることで起こる)
  • リウマチ因子(FR)が陽性になることが多いが必須ではない(RFは「抗変性免疫グロブリン抗=古くなった免疫グロブリンに対する抗体)」である)
  • 悪性関節リウマチでは血管炎症を伴う。

 

強皮症(進行性全身硬化症)

 

強皮症(=進行性全身硬化症)の特徴は以下の通り。

  • 1:4で女性に多い
  • 血管傷害を中心とする炎症性線維化病変
  • 抗体→抗セントロメア抗体・抗Scl-70抗体
  • 症状:レイノー現象(血管異常による収縮障害)・皮膚硬化・ソーセージ指(指紋が無くなる)・十二指腸収縮不全・肺線維症

 

皮膚筋炎(多発性筋炎)

 

皮膚筋炎(PM)多発筋炎(DM)とも呼ばれ、特徴は以下の通り。

  • 女性がやや多い
  • 筋肉が炎症の場
  • 抗体→抗Jo1抗体
  • 症状:近位筋群が対称的に障害される。筋肉痛。心筋も侵される。悪性腫瘍の合併が多い。

 

ベーチェット病

 

ベーチェット病の特徴は以下の通り。

  • 男女差なし
  • 粘膜が炎症の場
  • 3徴候:
    口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
    眼・ブドウ膜炎(虹彩・毛様体・脈絡膜)
    陰部の有痛性潰瘍

※3徴以外にも皮膚の結節性紅斑が特徴。

 

 

シェーグレン症候群

 

シェーグレン症候群の特徴は以下の通り。

  • 1:14で女性に多い
  • 外分泌腺が炎症の場
  • 抗体→SSB
  • 外分泌腺へのBリンパ球浸潤(涙腺分泌の低下→乾燥性角結膜炎・唾液分泌の低下→口内乾燥)

 

壊死性血管炎

 

壊死性血管炎は大型・中型・小型血管に分類される。

 

大型血管(大動脈とその分枝)

高安動脈炎(大動脈炎症候群)←脈に左右差アリ

 

中型血管

バージャー病結節性多発動脈炎(若年の突然の高血圧)・川崎病

 

小型血管(細動脈・毛細血管・細静脈)

  • ウェゲナー肉芽腫症(鼻・咽頭に肉芽種を形成)   ←ANCA(抗好中球細胞質抗体)
  • アレルギー性肉芽種性血管炎(気管支喘息に合併発症)←ANCA(抗好中球細胞質抗体)
  • ヘノッホシェーンライン紫斑病            ←免疫複合体性

 

混合性結合組織病(MCTD)

 

混合性結合組織病(MCTD)の特徴は以下の通り。

  • 女性に好発
  • SLE・強皮症・多発筋炎の混在
  • 抗体←抗RNP抗体

 

 

免疫不全

 

免疫不全はT細胞・B細胞・食細胞(マクロファージや好中球)が問題を起こす。

 

先天性免疫不全

 

※SCID(重症複合免疫不全)

 

X連鎖SCID

T・B細胞ともに機能不全←伴性劣性遺伝

 

ADA欠損症

アデノシンデアミラーゼ欠損、T・B細胞ともに機能不全

※アデノシン(=核酸合成に必要)が欠損する疾患

 

その他

BとT両方に障害を起こす疾患

毛細血管拡張性失調症ーATM gene異常(放射線障害・修復不全)

Wiskott-Aldich症候群ー主にT・Igも減少

Bloom症候群

 

Tリンパ球に障害

Di George症候群ー胸腺発育不全

 

Bリンパ球に障害

X連鎖無ガンマグロブリン血症ーブルトン血症

 

食細胞の障害

Chédiak東症候群ー好中球の機能不全

慢性肉下種   -同上

 

後天性免疫不全

 

薬剤性

プリン代謝薬・アルキル化剤⇒抗がん薬剤

 

放射線

細胞分裂を阻害⇒免疫↓・貧血・不妊など

 

病態

  • AIDS(HIVがCD4を減らす)
  • ホジキン病リンパ性白血病多発性骨髄腫(リンパ系の悪性腫瘍・正常なリンパ球が増えない)
  • SLE
  • 麻疹(Tリンパ球能↓)
  • 腎不全
  • ネフローゼ
  • サルコイドーシス(ツベルクリン陰性化)
  • ステロイド投与中(炎症応答+免疫応答を減じる)
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