この記事では、整形外科に多少関与する疾患について補足的に記載していく。
脳性小児麻痺
脳性小児麻痺とは「胎生期・出産時・出産直後←生後4Wまで)に生じた脳障害によって起こる随意筋の機能障害」を指す。
臨床症状は出産直後や発生直後から認め、非進行性かつ永続的に生涯を通じて存在する。
病因
病因は「胎児期・出産時・出産直後」に分類される。
胎児期の原因
- 脳性まひの原因の10%
- 脳の先天性発育障害(小脳が多い)
- 妊娠初期の母体の中毒・感染症
出産時の原因
- 脳性まひの原因の60~80%
- 難産→逆子、臍の緒が首に巻きつくなど
- 未熟児分娩
- 脳外傷
出産直後の原因
- 脳性まひの原因の10%
- 核黄疸(基底核を侵す黄疸)
- 各種脳炎
病型分類
病型分類は以下の通り。
痙直型
- 最も多い(60%)
- 大脳運動野・錐体路障害が主体
- 症状:筋緊張・深部腱反射・病的反射亢進。知的障害を伴うことが多いが程度は様々。
アテトーゼ
- 二番目に多い(20%)
- 大脳基底核障害
- 顔・四肢筋・首・体幹の大きくクネクネするような不随意運動
- 知能障害は無い
失調型
- 全体の5%
- 小脳障害による
- 協調運動障害
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
病理
錐体路、脊髄前角細胞、脳幹、運動細胞の変性
原因
不明。ただし、遺伝性を示す場合あり。
発症年齢
20才異常で発症するが40~50才の男性に多い。
経過
発病は緩徐、経過は進行性。予後は極めて不良で、発病後(平均)2~3年で死亡(人工呼吸器をつけなかった場合)。
症状
- 四肢筋萎縮・筋力低下→運動の麻痺
- 球麻痺(顔面神経麻痺・舌萎縮・構音障害・嚥下障害)
- 陰性症状:膀胱直腸障害・知覚障害・褥瘡・小脳症状・外眼筋麻痺
治療法
治療法は確立されていない。
進行筋ジストロフィー
病理
遺伝性・進行性の骨格筋の変性と筋脱力を主徴とする疾患。
1.伴性劣性型(仮性肥大)筋ジストロフィー a.重症型(ドゥシャンヌ型) b.良性(ベクター型) 2.常染色体劣性筋ジストロフィー a.肢帯型 b.小児筋ジストロフィー(ドゥシャンヌ型を除く) c.先天性筋ジストロフィー 3.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー |
ここから先は重症型(ドゥシャンヌ型)筋ジストロフィーについて記載していく。
ドゥシャンヌ型筋ジストロフィー
特徴
伴性劣性遺伝(つまり男性にのみ発症)
年齢
2~5才ごろに発症。10才前半で車椅子。20才頃までに死亡。
症状
初発症状は腰部筋、次いで肩甲帯の筋力低下
→次第に上下肢筋の筋力低下も起こり、「歩行が緩徐・階段昇降が困難」などの主訴で発見される。
- 登攀性起立(大殿筋・大腿四頭筋の筋力低下によって起こる特徴的な起立動作。床上より立ち上がる際に、膝に手をつき膝を伸ばしつつ、その手を大腿近位へ滑らしながら体幹を押し上げるように起立する。)
↓
- 全身筋萎縮が進行
↓
- 腓腹筋・ヒラメ筋の仮性肥大(萎縮した筋線維間に脂肪が蓄積する)、
動揺性跛行↓
- 10代前半で車椅子
↓
- 罹患筋は平滑筋にも及び、心筋障害も出現
↓
- 10代後半には、循環器・呼吸器の合併症で死亡
重症筋無力症
重症筋無力症とは「運動を続けると随意筋が疲労し脱力をきたす疾患」である。
病理
神経筋接合部での異常←アセチルコリン受容体に対する抗体形成
性別・年齢
20~40代の女性に多い(男性では50代に多い)
症状
- 初発症状として外眼筋麻痺(複視)、眼瞼下垂が多い。
- 顔面神経麻痺→筋無力症様顔貌
- 舌運動障害・構音障害・嚥下障害
- 四肢麻痺(上肢>下肢・近位筋>遠位筋)
- 重症例では呼吸筋麻痺
合併症
クリーゼ:症状が急激に悪化し、呼吸筋麻痺をきたしたもの。
コリン作動性クリーゼ(←抗コリンエステラーゼ剤過剰投与)
筋無力性クリーゼ(←病状が悪化した状態)
胸腺肥大
胸腺腫の合併(30%)←中年男性に多い
検査
筋電図
治療
- 第一選択は抗コリンエステラーゼ剤
- 胸腺摘出
- 血漿交換・免疫抑制剤・ステロイド剤
その他、スポーツ障害
最後に、スポーツ障害について記載しておく。
ランナー膝
- 「腸脛靭帯と大腿骨外側顆部の」繰り返される摩擦によって生じる。
- ランニングの他、内反膝の人にも生じやすい。
- 疼痛部位は膝外側。
- 整形外科的テスト=グラスピングテスト(背臥位で大腿骨外側上顆を圧迫しながら膝を圧迫させる)
膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
- ジャンプやランニングによって、膝伸展機構に繰り返しの機械的負荷が加わって生じる慢性障害。
- 疼痛部位は膝蓋骨下端。
シンスプリント(脛骨疲労性骨膜炎)
- ランニングやジャンプによって、脛骨のヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋の付着部に炎症を生じる。
- 下腿内側下1/3の範囲に疼痛が生じる(ちょうど三陰交・地機などが存在する部位)。
- 部活を始めたばかりの中高生に多く「初心者痛・新人痛」などとも呼ばれる。