腎疾患 | 臨床医学各論

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この記事では腎疾患について解説している。

 

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腎臓の基礎知識

 

腎臓の「働き」と「機能不全による所見」は以下の通り。

 

腎臓の働き

  • 老廃物の排泄
  • 電解質・水の調整
  • 血圧の調整(レニン・アンジオテンシン系)

 

機能不全による所見

  • クレアチニンや血中BUN(血清尿素窒素)の上昇
  • タンパク尿⇒低アルブミン血症⇒浮腫・胸水・腹水
  • 高血圧

 

※ナトリウム(Na)は、腎が正常であれば再吸収され排泄されない。

 

クレアチニンとは

クレアチニンは「クレアチンリン酸(筋活動時に必要なエネルギ源)」が代謝された後にできる排泄物を指す。体に不要なものであり、血液に含まれるクレアチニンは腎臓で濾過され排泄される。クレアチニンは尿以外では体外に排泄されないため、血液中のクレアチニン値が高い場合は、腎臓が悪くなってくる可能性がある。

 

BUN(血清尿素窒素)とは

BUNとは「たんぱく質が分解される際にできる老廃物」の一種。クレアチニンと同様に、ほとんどが尿中に排泄されるため、腎機能が低下すると血液中のBUN値が上昇する。

一方でBUNは、肝臓でアンモニアと二酸化炭素をもとに作られるので、肝硬変などの肝機能障害ではBUN値が低下する。

 

尿量と乏尿・無尿・閉尿

 

尿量は「腎臓で血液が濾過されて生成された体内代謝産物が溶けている排泄物の量」を指す。

  • 乏尿:尿量が正常値の1/3以下となる状態
  • 無尿:尿量が0.1ℓ以下となる状態
  • 閉尿:膀胱より下部尿路が閉塞することによる排尿困難状態
ちなみに前立腺疾患で生じるのは閉尿であり乏尿・無尿ではない(尿自体は膀胱に溜まっている)。

 

腎不全

 

腎不全は「水・電解質異常」「老廃物蓄積」「高血圧」などからくる症状の総称を指す。

 

腎不全には「急性」と「慢性」に分類される。

 

でもって、ここから先は「急性腎不全」について解説していく。

 

急性腎不全

急性腎不全は「腎前性」「腎性」「後腎性」に分類される。

 

腎前性

  • 腎前性腎不全は、腎血流量低下により生じる(治療としては輸血・輸液)
  • 腎前性は、腎臓自体の機能は保たれていいる。
  • 腎前性の原因としては出血・脱水・ショック・心不全が挙げられる。
  • 腎前性の予後は良好(適切な治療で数日で回復)である。

 

腎性

  • 腎性腎不全は、腎臓自体が障害されることに生じる(治療としては栄養管理・原疾患の治療・重篤になれば人工透析など)
  • 腎性の原因としては急性糸球体性腎炎・急性尿細血管壊死(ATN)などが挙げられる。
  • 腎性の予後は(高齢者や多臓器不全を伴う例では)不良である。

 

後腎性

  • 後腎性腎不全は、腎臓から排泄される尿路の閉塞によって生じる(経皮経尿管ドレナージなどで尿路を確保する)
  • 後腎性は「尿が出せない状態」であり、原因としては尿路閉塞・前立腺肥大が原因となり、両側の水腎症を引き起こす。
  • 後腎性の予後は良好(尿路を開通すれば改善されるため)である。

 

 

腎炎

 

ここでは腎炎として以下について記載していく。

  • 原発性糸球体腎炎
  • ネフローゼ症候群
糸球体に火事(炎症)起きる病気を「腎炎」と呼ぶ。その中でも、たんぱく尿が多く、血管内のたんぱく質が失われてしまう状態を「ネフローゼ症候群」と呼ぶ。

 

治療はいずれも共通しており以下の通り。

  • 急性:安静・保温
  • 乏尿期:水分・塩分・たんぱく質制限
  • 進行性:たんぱく質制限・塩分制限・血圧管理・浮腫対策

 

原発性糸球体腎炎

 

原発性糸球体腎炎を「急性」と「慢性」に分けて記載していく。

 

急性

「急性の原発性糸球体腎炎」は以下を指す。

溶血性連鎖球菌の感染により発症する糸球体炎症

 

発症機序

原発性糸球体腎炎の発症機序は以下になる。

溶連菌感染⇒抗体産生⇒抗原抗体反応⇒補体活性化⇒腎組織障害

 

症状

症状としては「(血尿・タンパク尿をと伴う)浮腫・高血圧」が挙げられる。

 

検査所見

  • 血尿・タンパク尿
  • BUN・クレアチニン↑
  • ASO(抗ストレプトリジン抗体)↑
  • 腎生検

 

予後

3カ月間で寛解、一部は慢性化(成人30~40%、小児20%以下)。

 

慢性

「慢性の糸球体腎炎」は以下を指す。

血尿・タンパク尿が一年以上継続する状態

 

軽度

軽度タンパク尿・血圧・腎機能正常

 

進行型

高血圧+腎機能障害が生じる。

検査所見は「血尿・タンパク尿・BUNとクレアチニン↑・IgA↑・腎生検」である。

 

ネフローゼ症候群

 

ネフローゼ症候群は「腎炎の中でも、大量のタンパク尿が出る(=低タンパク血症)症候群」を指す。

 

またネフローゼ腎症は「高コレステロール」が特徴である。

 

原因

  • 一次性⇒様々の糸球体疾患
  • 二次性⇒代謝性・膠原病・全身アレルギー性・ある種の悪性腫瘍・薬物、毒物・感染症(B肩肝炎・マラリア)・熱傷・筋ダメージ

 

腎感染症

 

腎感染症として以下について記載していく。

  • 腎盂腎炎(女性に多い)
  • 膀胱炎 (女性に多い)
  • 尿道炎 (男性に多い)

 

腎盂腎炎

  • 三徴候:発熱・腰痛・膿尿
  • 性別:若年女性・高齢男性・小児男児に多い(とくに若年女性に多いのが特徴的)
  • 起因菌:大腸菌が多い(大腸菌が「便⇒尿道⇒腎」と上行性感染する。男性は尿道が長いため逆行性が起こりにくい)
  • 無症状で気づかないうちに、大腸菌が腎臓で大量増殖し、症状誘発するため要注意。

 

膀胱炎

  • 症状:頻尿・排尿痛・残尿痛・尿混濁・血尿
  • 検査:尿沈査・細菌培養検査
  • 起因菌:腎盂炎と同様に大腸菌が多い。女性が発症しやすいのも腎盂炎と同様。

 

尿道炎

  • 症状:排膿・尿道痛
  • 性別:男性に多い(腎盂炎・膀胱炎は女性に多い)
  • 起因菌:淋菌・クラトミジアトラコマイシス(つまりは性感染症)

 

尿路感染症

 

尿路感染症の中で以下について記載していく。

  • 膀胱癌
  • 腎腫瘍(腎細胞癌)
  • 尿路結石
  • 前立腺肥大
  • 前立腺癌

 

膀胱癌

 

  • 膀胱がんは尿路上皮由来の癌である。
  • 性別:男性に多い
  • 成因:化学物質・喫煙など
  • 症状:血尿・膀胱炎併発症状(腎腫瘍も含め「血尿」が特徴的)
  • 治療:外科手術(再発しやすいという特徴を持っている)

 

 

腎腫瘍(腎細胞癌)

 

腎腫瘍(腎細胞癌)は近位尿細管由来の癌である。

※腎腫瘍は、別名グラヴィッツ腫瘍とも呼ばれる。

  • 性別:男性に多い
  • 三主徴:血尿・腹部腫瘤・側腹部痛
  • 診断:エコー・CT・MRI・腎血管造影
  • 予後:外科・免疫療法
  • 予後:転移の有無・大きさ・周囲浸潤による

 

尿路結石

 

  • 性別:男性多い。
  • 生涯罹患疾患:5%と比較的多い。
  • 石の種類:蓚酸カルシウム・リンカルシウム・尿酸
  • 症状:疝痛発作・血尿
  • 結石が尿管に詰まって凄く痛い。
  • 「腹部のみならず腰背部~下肢に放散する痛み」なこともあり、急性痛で来院した際は、鑑別が重要。
  • 基礎疾患に注意!例えば甲状腺機能亢進症など。
  • 予後:80%は自然排泄されるため、「鎮痛薬投与+水分補給(尿の増加)による結石排泄」を期待する。あるいは尿管に対して衝撃破砕術を施行することも。

 

前立腺肥大

 

前立腺肥大症は「良性の腫瘍が前立腺に形成され、尿道圧迫⇒排尿障害を呈する疾患」である。

 

症状

排尿障害として以下が挙げられる。

夜間頻尿・遅延性排尿・残尿感

また上記から尿路感染・水腎症へ発展することもある。

 

診断

直腸指診・エコー・尿路造影など

 

治療

経尿道的前立腺切除・レーザー焼灼術・薬物療法

 

 

前立腺癌

 

前立腺癌は外腺由来が多いため、潜在性癌が多い。

前立腺癌は増加傾向。

 

症状

排尿障害(頻尿・残尿・排尿痛)

血尿

※血尿や排尿痛が前立腺肥大と異なる点

 

マーカータンパク

前立腺抗原(PAまたはPSA)⇒癌で唯一尿検査で癌が分かる!!

酸性ホスファターゼ、g-Sm(γ-セミノプロテイン)

前立腺組織生検(多針が必要)⇒病理検診

 

外科手術

前立腺摘出

精巣摘出+エストロゲン療法(睾丸を取って女性ホルモンを注入する)

放射線療法

 

予後

転移による(骨転移・脳転移が多い)。

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